2025年5月法改正で 従業員50名未満の企業もストレスチェックが義務化されます。まずは無料相談・資料請求から。

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産業医切り替え

産業医の変更・乗り換えは可能?流れと注意点、失敗しないためのチェックポイント

公開日:

/ 監修:認定産業医 前田 美里

この記事でわかること

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はじめに

産業医との契約は、一度結ぶと簡単には変えられないと思われがちです。実際には契約形態を問わず、変更そのものを制限する法律上の規定はありません。契約更新のタイミングでの切り替え相談は、産業医サービス各社でも増加傾向にあると言われています。

ただし2026年8月1日には、産業医の辞任・解任・退任に関する届出ルールが新たに施行され、契約期間の満了にともなう終了(退任)も報告の対象になりました。この記事では、乗り換えを検討すべきサイン、実際の手続きの流れ、よくあるトラブルの回避策を順にまとめています。[1・2]

産業医は変更できるのか(契約形態別の可否)

産業医はどの契約形態でも変更が可能です。実務上の進め方は契約の種類によって異なるため、まずは自社がどのタイプの契約を結んでいるかを確認しましょう。

  • 嘱託産業医(顧問契約):最も一般的な契約形態です。多くの場合、契約書に解約予告期間(1〜3か月前の通知など)が定められています。まずは契約書の解約条項を確認し、通知のタイミングを逆算して動き出しましょう。

  • 専属産業医:常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または一定の有害業務に常時500人以上が従事する事業場で選任が必要な形態です。自社で雇用しているケースが多く、その場合は通常の雇用契約と同様に、就業規則や労働契約に基づいた手続きを踏む必要があります。顧問契約に比べて手続きが煩雑になりやすい点に注意が必要です。

  • 紹介会社経由の契約:産業医本人との契約に加え、紹介会社側の契約条件(最低契約期間、途中解約時の違約金の有無など)も確認が必要です。紹介会社を介さず直接契約している場合よりも、確認すべき項目が一つ増えることになります。

いずれのケースも「変更できない」ことはありませんが、解約条件を確認せずに進めると、想定より時間や費用がかかることがあります。まずは現在の契約書を手元に用意し、解約条項・違約金・予告期間の3点を確認するところから始めましょう。

変更を検討すべきサイン(対応の遅さ・費用・専門性のミスマッチ)

次のようなサインが複数当てはまる場合は、変更を検討するタイミングかもしれません。一つひとつは些細に見えても、積み重なると従業員の安全衛生管理や労務リスクに直結するため、早めのチェックをおすすめします。

  • 面談の調整に時間がかかる、メールや相談への返信が遅い:緊急性の高いメンタル不調の相談であっても対応が後回しにされるケースがあります。

  • 契約で定めた訪問や面談が履行されていない:産業医の職場巡視は、原則として少なくとも毎月1回の実施が法令で義務づけられています(労働安全衛生規則第15条第1項。衛生管理者の巡視結果などの情報提供を毎月受け、かつ事業者の同意がある場合に限り、2か月に1回とすることが可能です)。訪問実績を記録していない企業も多いため、法定の頻度・契約内容と実態にズレが生じていないか確認が必要です。

  • ストレスチェックの実務対応(集団分析や高ストレス者対応)に消極的:ストレスチェックの重要性は今後さらに高まる見込みで、対応に消極的な産業医とのミスマッチは拡大しやすい領域です。

  • 費用が相場と比べて高い、または追加費用の発生条件が不透明:契約時の見積もりと実際の請求額に差が出ていないか、過去1年分の請求書を見直してみましょう。

  • 自社の事業内容や働き方(リモートワーク、成長フェーズ特有の労務課題など)への理解が浅い:特にスタートアップや急成長企業では、一般的な産業医知識だけでなく経営目線でのアドバイスが求められます。

「なんとなく合わない」という感覚も、実は上記のいずれかに起因していることが多いため、違和感を放置せず言語化してみましょう。

変更の基本フロー(現産業医への通知〜新産業医選任〜労基署届出)

変更は大きく3つのステップで進みます。

  1. 現産業医への解約通知:現産業医本人に解約理由を詳しく説明する義務はありませんが、円満に進めるためには「契約更新のタイミングでの見直し」といった伝え方が無難です。なお、産業医が辞任した場合や事業者が解任した場合は、その旨と「その理由」を遅滞なく衛生委員会(または安全衛生委員会)に報告する義務があります(労働安全衛生規則第13条第4項)。社内手続きとしては理由の整理が必要になる点に留意しましょう。

  2. 新しい産業医の選任:複数の候補先を比較検討したうえで契約を締結します。比較すべきポイントは、対応スピード・費用・専門性・オンライン対応の可否など多岐にわたります。

  3. 労働基準監督署への届出:新産業医の選任報告を行います。

2026年8月1日に施行された新しいルール(労働安全衛生規則第13条第5項)により、産業医が辞任した場合、事業者が解任した場合、契約期間の満了などで退任した場合は、その氏名と年月日を所轄の労働基準監督署に遅滞なく報告することが義務化されました(対象は常時50人以上の労働者を使用する事業場)。

後任がすでに決まっている場合は、新産業医の選任報告のなかで前任者の辞任等の情報をあわせて記載すれば、別途の報告は不要です。実務上はこの方法が最もシンプルです。

一方、後任が決まる前に前任の産業医が離任する場合は、選任報告に併記できないため、辞任等の報告を単独で提出する必要があります。今回の改正は「後任が決まらないまま産業保健体制が空白になること」を防ぐことが趣旨であり、このケースが想定されています。[1・2]

費用面では、乗り換えによって基本料金が変わるだけでなく、初回の産業医訪問時に職場巡視や既存資料の確認といった「引き継ぎ工数」が発生する場合があります。契約前に、切り替え時の初期費用や訪問回数の扱いについても確認しておくと安心です。

引き継ぎも含めた全体の目安期間は、契約解除の通知期間にもよりますが、1.5〜2か月程度を見ておくと安心です。繁忙期やストレスチェックの実施時期と重ならないよう、スケジュールには余裕を持たせましょう。

変更時によくあるトラブルと回避策

  • 引き継ぎ不足で健診データや意見書が新産業医に渡らない → 健康診断の結果や面接指導の記録は、法令上、事業者(会社)に5年間の保存義務があり、原本は会社が保有しています。旧産業医から取り寄せず、会社側で整理して新産業医に提供するという前提で引き継ぎ資料のリストを作成しましょう。特に長期休職者がいる場合は、経過記録の引き継ぎが遅れると本人の職場復帰支援に支障が出ることがあります。

  • 現産業医との関係が悪化する → 契約解除の連絡は書面で丁寧に行い、必要であれば一時的に新旧2名体制を取ることも選択肢になります。ただし、現産業医への配慮を忘れず、感情的な行き違いを避ける工夫が必要です。なお2名体制を取る場合は、両名について選任報告が必要になり、旧産業医の退任時にあらためて辞任等の報告も必要になります。手続きが増える点も踏まえて判断しましょう。

  • 「名義だけ」の産業医契約に気づかず放置していた → 実際に職務を遂行していない契約は労働安全衛生法上のリスクにもなるため、変更を機に実態を確認しておくと安心です。

  • 届出の遅延・漏れ → 2026年8月の改正で辞任等の報告が新たに義務化されたため、変更スケジュールに労基署への届出期限を必ず組み込みましょう。[1]

  • 従業員への説明が不足し不安を招く → 産業医が変わることを事前に周知せず突然切り替えると、「相談していた内容が引き継がれるのか」といった不安の声が上がることがあります。変更の目的や引き継ぎ体制について、簡潔にでも従業員へ案内しておきましょう。なお、産業医の業務内容・健康相談の申出方法・健康情報の取扱い方法については、常時各作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法で労働者に周知することが法律上義務づけられています(労働安全衛生法第101条第2項、労働安全衛生規則第98条の2)。産業医が変わったら、掲示物やイントラネットの記載も忘れずに更新しましょう。

こんな企業は特に確認を

以下のいずれかに当てはまる企業は、変更の要否にかかわらず、一度立ち止まって現状を点検しておくことをおすすめします。

  • 直近1年で従業員数が増え、常時50人以上になった(またはその見込みがある):選任義務の対象範囲や、必要な対応の水準が変わるタイミングです。

  • 契約更新の時期が近い:更新前の1〜2か月は、比較検討や交渉がしやすいタイミングです。

  • 複数の拠点・事業所があり、産業医体制がバラバラになっている:複数拠点をまとめて統括する体制への切り替えとあわせて見直すと効率的です。

  • 過去に労基署から指摘・指導を受けたことがある:同じ指摘を繰り返さないためにも、体制そのものの見直しが有効です。

  • ストレスチェックの結果を集団分析まで活用できていない:分析結果を職場環境の改善につなげられていないなら、対応力を見直す好機です。

どれか一つでも当てはまる場合は、契約書と直近1年の対応記録を並べて確認するところから始めると、次の一手が見えやすくなります。

よくある質問

  1. 産業医を変更する理由を、現産業医に説明する義務はありますか?
    現産業医本人に対して変更理由を説明する義務は、法律上ありません。ただし円満な引き継ぎのためには、契約更新のタイミングでの見直しである旨を伝えるなど、丁寧なコミュニケーションを心がけるのが実務上は望ましいでしょう。なお、産業医の辞任・解任があった場合は、その旨と理由を遅滞なく衛生委員会等に報告する義務があります(労働安全衛生規則第13条第4項)。「誰にも理由を説明しなくてよい」わけではない点にご注意ください。

  2. 契約期間の途中でも産業医を変更できますか?
    可能です。産業医との顧問契約は準委任契約にあたるため、民法上は各当事者がいつでも解除できるのが原則です(民法第651条第1項)。ただし、相手方に不利な時期の解除では損害賠償が問題になり得るほか、契約書に予告期間や違約金が定められている場合はそれに従う必要があります。まずは契約書の解約条項を確認したうえで進めましょう。

  3. 変更先が決まる前に、現産業医との契約を解除してしまっても大丈夫ですか?
    空白期間ができると、その間は産業医不在の状態になります。常時50人以上の労働者を使用する事業場で産業医を選任していないことは労働安全衛生法第13条第1項に違反し、罰則の対象にもなり得ます。新しい産業医との契約締結を先に進め、切り替えのタイミングを合わせることをおすすめします。どうしても空白期間が生じる場合は、緊急時の相談先を社内で確保しておくと安心です。

まとめ

産業医の変更は、契約形態の確認、変更すべきサインの見極め、届出を含めた手続きという3つのステップで進めることができます。2026年8月からは辞任・解任・退任の届出ルールも新たに施行されているため、スケジュールに余裕を持って計画的に進めることが大切です。契約更新のタイミングに合わせて準備を始めれば、違約金の発生や空白期間のリスクを抑えながら、無理なく切り替えを完了させることができます。[1]

出典・参考情報

[1]労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(令和8年4月28日付 基発0428第4号)|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001700019.pdf
[2]リーフレット「産業医による労働者の健康管理等を徹底しましょう」(2026年4月)|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 https://www.mhlw.go.jp/content/001480782.pdf
[3]労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第13条|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
[4]労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057

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